16 9月, 2014

セリエA第2節 パルマvsミラン

 インザーギ監督としての初戦、開幕戦を白星で飾りいいスタートを切ったミラン。このままいいシーズンにすることができるのか。第2節はアウェー、スタディオ・エンニオ・タルディーニでのパルマ戦です。

パルマFC

  • GK
  • 83 ミランテ
  • DF
  • 13 リストフスキ
  •   6 ルカレッリ
  • 19 フェリペ (77'退場)
  • 11 デ・チェリエ
  • MF
  • 30 アックア
  • 21 ローディ
  • 80 ホルケラ
  •  → 88 コーダ (73')
  • FW
  •   5 ゲザル
  •  → 17 パッラディーノ (65')
  • 99 カッサーノ
  • 10 ベルフォディル
  •  → 20 ビダウィ (79')

ACミラン

  • GK
  • 23 ディエゴ・ロペス
  • DF
  • 20 アバーテ
  • 33 アレックス
  •  → 13 ラミ (62')
  • 25 ボネーラ (58'退場)
  •   2 デ・シリオ
  • MF
  • 16 ポーリ
  • 34 デ・ヨング
  •   4 ムンタリ
  • FW
  • 10 本田
  •  → 17 サパタ (62')
  •   7 メネズ
  •  → 19 ニアン (86')
  • 28 ボナヴェントゥーラ

 ミランは開幕戦とほぼ同じメンバー。トーレスは早速怪我をしてメンバー外のためデビューはおあずけとなりました。エル・シャーラウィに代わって左サイドに入った新加入のボナヴェントゥーラがどのような動きをするのかが注目です。

Parma 4 - 5 Milan - legaseriea.it

 パルマは序盤こそ積極的に出てきていたものの、途中からはミランにポゼッションは預けてくれました。ラインを低くして、ボールを奪ったら前線のサイドに当ててためを作る形がチーム全体で共有できています。うまく縦のギャップを作ったところでカッサーノが自由に動いてボールを捌くことでいい攻撃ができていました。

 ミランも相手のブロックができないうちに早くボールを運ぼうという意識は統一されていて、メネズが積極的に降りてきてボールを受ける姿勢を作り他の選手がそこに絡んでいく形を作ろうという意図が見られました。
 さらに両SBのアバーテとデ・シリオが高い位置をとり、機を見てペナルティエリア近くまで入っていったのも昨シーズンまでにはなかった動きでインザーギ監督のやり方なのでしょう。インザーギが現役でプレーしていた頃のミランのサイドバックはカフー、ジョルジーニョなど攻撃的な選手が多かったのであの頃のような形を期待してしまいます。
 この試合ではこれがうまくはまり、先制点と2点目は共にアバーテがデ・チェリエを引っ張ってサイドに流れたことでうまく本田のところにボールが入ってきました。昨シーズンから引き続き右サイドの縦の関係は非常にいいですね。

 開幕戦に引き続きロングカウンターでの攻撃もキレがあり、メネズ、デ・ヨングによる追加点で大量5得点。しかし、守備の方も4失点とかなり厳しい戦いを強いられてしましました。失点シーンはボールウォッチャーになっている選手が多くかなり改善していかなければいけないのではないでしょうか。ボネーラが退場してしまったことを考慮してもひどいと言わざるを得ません。
 何はともあれ開幕2連勝ということで結果は出ていますが、既に課題が山積みなっているミラン。このまま連勝が続くことはないでしょうが、悪い試合でも勝点をとって上位に入っていって欲しいと思います。

02 9月, 2014

セリエA第1節 ミランvsラツィオ

 昨シーズンは7位に終わりヨーロッパの舞台への切符を失ってしまったミラン。サッカーの質、資金力ほか諸々の面で停滞期となって久しいですが、クラブのレジェンドの1人、フィリッポ・インザーギが監督に就任しました。ピッポもトップチームでの監督ははじめてなので過度な期待はできませんが、なるべく長い目でクラブの成長の流れを作ってもらいたいです。セードルフのような離れ方はもう見たくありませんし。

ACミラン

  • GK
  • 23 ディエゴ・ロペス
  • DF
  • 20 アバーテ
  • 17 サパタ
  • 33 アレックス
  • 25 ボネーラ
  • MF
  • 16 ポーリ
  • 34 デ・ヨング
  •   4 ムンタリ
  •  → 15 エッシェン (67')
  • FW
  • 10 本田
  •  → 27 アルメロ (77')
  •   7 メネズ
  •  → 19 ニアン (82')
  • 92 エル・シャーラウィ

SSラツィオ

  • GK
  •   1 ベリシャ
  • DF
  •   8 バスタ
  •   3 デ・フライ
  • 27 カナ
  • 26 ラドゥ
  • MF
  • 16 パローロ
  • 20 ビリア
  • 19 ルリッチ
  •  → 6 (73')
  • FW
  • 87 カンドレーヴァ
  • 11 クローゼ
  •  → 9 (59')
  • 14 ケイタ
  •  → 7 (60')

 インザーギ新監督のシステムは4-3-3が基本となり、プレシーズンマッチの映像などを見ていると中盤の3枚は補完し合う形でセンターハーフの役割、3トップはセンターフォワードと両ウイングといった配置になっています。新加入選手はディエゴ・ロペスとアレックス、メネズが早速先発出場しており、どのような活躍をしてくれるか楽しみです。反対にモントリーヴォとデ・シリオは怪我のため開幕欠場。今シーズンはなるべく怪我で離脱する選手が少なくなることを願うばかりですね。

Milan 3 - 1 Lazio - legaseriea.it

 立ち上がりから縦への意識の強いラツィオに対してミランは中盤をコンパクトにしてボールの出所を潰していこうという狙い。そこでボールを奪えればエル・シャーラウィが走れば勝てるという計算なのか積極的に前に蹴っていきます。サイドから数的優位を作って崩したいラツィオにこのカウンターがはまり、前半7分にはボネーラのパスからエル・シャーラウィが抜けだし本田が今シーズン初ゴール。3人とも非常にレベルの高いボールタッチを見せてくれました。
 試合全体のペースとしてはミランサイドでラツィオがボールを持っている時間が長いのですが、最後のところで合わせきれずに前半は両チーム共にシュート数が2本に終わります。後半も基本的な流れは変わらず、とにかく相手の守備が整わないうちに個人の打開で打ち切ってしまいたいミランが開幕戦で3点を挙げて勝利となりました。

 サパタ、アレックスのCBコンビ、そして本職ではないボネーラがSBをやっていることにかなりの不安はあるものの、新加入のディエゴ・ロペスはいままでのミランのGKにはない期待を見せてくれましたし、あれだけゴール前でプレーされながらなんとか最後のところで身体を寄せて1失点に抑えたところは評価できます。
 攻撃の方はポゼッションからの崩しがまだ整備されていない状態ではドリブラーの才能に頼った高速カウンターをやっていくしかないのか。移籍市場が終了していないためメンバーも不確定な状態では何とも言えないのですが、はやくピッポのチームの形を見たいです。この試合ではラツィオが前に人数をかけてきたためにかなり効果的でしたがゴール前を固めてくるプロヴィンチャ相手では通用しないでしょうし。
 何はともあれきつい時間帯を耐え開幕戦を勝利で飾ったミランを今シーズンも応援していきたいと思います。

14 6月, 2014

FIFAW杯 スペインvsオランダ

 前日に行われた開幕戦の余韻も冷めやらぬ中、グループステージの初戦で前回大会決勝の組み合わせです。

スペイン

    GK
  •   1 カシージャス
  • DF
  • 22 アスピリクエタ
  •   3 ピケ
  • 15 セルヒオ・ラモス
  • 18 ジョルディ・アルバ
  • MF
  • 16 ブスケツ
  • 14 シャビ・アロンソ → 11 ペドロ (62')
  • 21 ダビド・シルバ → 10 セスク・ファブレガス (78')
  •   8 シャビ
  •   6 イニエスタ
  • FW
  • 19 ディエゴ・コスタ → 9 トーレス (62')

オランダ

    GK
  •   1 シレッセン
  • DF
  •   3 デ・フライ → 13 フェルトマン (77')
  •   2 フラール
  •   4 マルティンス・インディ
  • DF
  •   7 ヤンマート
  •   8 ジョナサン・デ・グズマン → 20 ワイナルドゥム (62')
  •   6 デ・ヨング
  •   5 ブリント
  • FW
  •   9 ファン・ペルシー → 17 レンス (79')
  • 10 スナイデル
  • 11 ロッベン

 スペインは今シーズンアトレティコ・マドリードで大活躍を見せたディエゴ・コスタをセンターハーフに置く4-3-3の形。2010年のワールドカップ、2012年のユーロで優勝したものの説得力のあるストライカーがいなかったこのチームにフィットすることはできるのでしょうか。
 オランダは3バックの前に4枚並べる形の3-4-3。スペインの攻撃に対して前線の3人まで含めてどのような守備ブロックを作ってくるか注目です。

2014 FIFA World Cup Brazil™: Spain-Netherlands - Overview - FIFA.com

 オランダは3バック試合前の予想通り7枚でバイタルエリアを埋めていく狙い。ただ単純にウイングバックを下げて5-2ではなく、近くにいる選手に対してはエリアをまたいでついていってボールが入るとかなり厳しくアタックしていました。特にイニエスタのポジションチェンジに対してはデ・フライをはじめ常に誰かがチェックして前を向かせない意図が感じられます。さらにファン・ペルシーやスナイデルもスペインのDFがオーバーラップした際にしっかりとついてきているためにさらにスペースがなくなっていく悪循環。
 ただ中盤で潰すために最終ラインはかなり高めに保っており、ここでディエゴ・コスタの裏を狙う動きが有効に働いてきます。先制点につながったPKもDFラインの間を斜めに切った形でオランダの目論見を崩す形になりました。

 先制されて前に出ざるを得なくなったことでオランダは序盤ほどコンパクトな陣形を作れなくなり、さらにスペインのペースに。ロングカウンターでシュートまでもっていくスペインを見るのはわりと珍しい気もします。ただその流れを断ち切ったのがファン・ペルシーのヘディングシュートでした。スペインの守備もオランダのビルドアップに対する人数は揃っていたのですが、セルヒオ・ラモスが完全においていかれてしまいカシージャスのポジションまで見切った完璧なゴールです。
 ファン・ペルシーのすごさもさることながら、動き出しを見逃さずにクロスをあげたブリントもすごいです。センターライン付近でも簡単に蹴らせてはいけないということでスペインはより早いプレッシャーが必要になってきます。

 ただそのプレスをさらに上回ったブリントは53分にも低い位置からのロングボールでロッベンの追加点をアシスト。FWの動き出しを見ながらダイレクトであんなボールが出せるとか脅威以外の何者でもありませんね。もちろんきっちりトラップして2人かわしてゴールに叩き込んだロッベンの得点能力は言うに及ばず、中盤からの守備にリソースを割いても個人でこれだけ持っていければ十分です。
 スペインもペドロとトーレスと投入し前線の動きの活性化を図りますがオランダのバイタルエリアは閉じられたまま。サイドから放り込むという選択肢を持たないスペインは徐々に手詰まり感が出てきてしまい逆に5失点という最悪の展開になってしまいました。

 オランダは90分を通してイニエスタをはじめスペインのポジションチェンジに対してかなり研究して対策をしてきた印象です。ポゼッションサッカー対策は各チームが近年様々な形で行っていますが、この試合のオランダもその集大成と言えるのかもしれません。もちろん前線に個の力で点の取れる選手とそこに正確なボールを出せる選手がいてこそのスピードに乗ったロングカウンターなのですが、その狙いがうまくはまったオランダが初戦を大勝で飾りました。

13 6月, 2014

FIFAW杯 ブラジルvsクロアチア

 サッカー王国ブラジルで開催される4年に1度の祭典FIFAワールドカップ。普段はクラブ中心であまりナショナルチームの試合を見ることはないのですが、やはり世界最大のスポーツイベント、1カ月間がんばって早起きして見てしまう生活になりそうです。

ブラジル

    GK
  • 12 ジュリオ・セーザル
  • DF
  •   2 ダニ・アウヴェス
  •   3 チアゴ・シウバ
  •   4 ダヴィド・ルイス
  •   6 マルセロ
  • MF
  • 17 ルイス・グスタヴォ
  •   8 パウリーニョ → 18 エルナネス (63')
  •   7 フッキ → 20 ベルナルジ (68')
  • 11 オスカル
  • 10 ネイマール → 16 ラミレス (88')
  • FW
  •   9 フレッジ

クロアチア

    GK
  •   1 プレティコサ
  • DF
  • 11 スルナ
  •   6 ロヴレン
  •   5 チョルルカ
  •   2 ヴルサリコ
  • MF
  • 10 モドリッチ
  •   7 ラキティッチ
  •   4 ペリシッチ
  • 20 コヴァチッチ → 14 ブロゾヴィッチ (61')
  • 18 オリッチ
  • FW
  •   9 イェラヴィッチ → 16 レビッチ (78')

 ブラジルの先発メンバーは1年前のコンフェデレーションズカップでもお馴染みだった構成。抜群の安定感とネイマールのアイドルっぷりで地元優勝を期待されています。対するクロアチアは個々の選手はクラブで見ているもののチームとしてどういうサッカーをするのかは勉強不足にて全く知りません。まあこれからそんな国はたくさん出てくるのであまり気にしないでください。

2014 FIFA World Cup Brazil™: Brazil-Croatia - Overview - FIFA.com

 ブラジルはまずボールを保持して積極的に先制点を狙っていきますが、クロアチアも自陣に入ってから中盤でしっかりと潰す形を作れているために簡単にはシュートまでいかせてくれません。プレスポイントがはっきりしていて前線に入れるグラウンダーのパスを許しませんでした。そこで2列目の3人の位置を入れ替え崩しどころを探っていたところでマルセロのオウンゴールでクロアチアが先制。
 ブラジルの両サイドバックが高い位置をとるのはどのチームも織り込み済みですが、開幕戦からあんなに綺麗に裏をとられるとは思っていませんでした。それまでも何度か狙っていたところでしたが中での人数は足りていましたし付き方も悪いわけではなかったのですが仕方ないですね。

 先制はされましたがブラジルはまだ余裕を持って組み立てていけます。フッキが左に流れネイマールが中央に、マルセロとの3角形を起点にしようというのがひとつ。さらにオスカルが右サイドに張ってダヴィド・ルイスと2人でサイドチェンジや裏のスペースを狙っていくのがひとつ。パウリーニョのボールの受け方も変化をつけて中盤のとりどころをずらしていこうという意図も見えますし、試合中にこれだけ修正してこれるチーム力はすごいです。
 待望の同点ゴールは中盤のつぶし合いを制したネイマールがドリブルで運んでそのままゴール右隅に決めました。執拗な右サイドでの裏狙いの影響か、クロアチアのDFラインが少し下がりはじめたところでネイマールには十分すぎるくらいバイタルエリアがあいてしまいましたね。

 後半はブラジルがサイドバックの上がりを抑え、右サイドのオスカルを起点にする崩しを増やしていきます。前半の左サイドとは違う形でコンビネーションを作っていき1対1の場面では確実に相手DFを外せるテクニックはさすがとしか言い様がありません。クロアチアの左サイドバックに入っているヴルサリコも前半はで耐えていましたが、オスカルの足元に的確なパスが入って前を向かれると止めるのは至難の業です。
 クロアチアのニコ・コバチ監督は中盤のコヴァチッチに代えてブロゾヴィッチを投入。その直後にスコラーリはエルナネスとベルナルジを相次いで入れ中盤を制する戦いになります。このあたりブラジルはもちろんですが、クロアチアも自分たちのやり方にある程度自信を持っているんだなあということがうかがえます。モドリッチもブラジルのはやいチェックに負けずしっかりとした組み立てを見せていましたし、前線にマンジュキッチが入ればさらに出しどころも増えてくるんじゃないでしょうか。

 PKによる勝ち越し点が入ってからは前に出るクロアチアと迎え撃つブラジルという構図に。そして途中交代で元気なベルナルジを中心とした左サイドからの崩しがまた出始めます。試合中意図的に重点を置くサイドを2度も変えてくるチームとかほんと嫌ですね。そこからのカウンターでさっきまで右サイドで起点になっていたオスカルが追加点。
 オスカルは去年のコンフェデではなかなかコンディションが上がらず苦しそうでしたがW杯にはしっかり仕上げてきました。この試合ではある意味ネイマールよりも重要なポジションで結果を出したんじゃないでしょうか。といってもセレソンの照準は確実に決勝に合わせてきてるはずなのでこれが1カ月保てるかはまだ疑問ですが。

 というわけで開幕戦は開催国のブラジルが順当に勝利。内容も素晴らしく今大会の優勝候補筆頭であることはやはり間違いないですね。
 PKの判定については直後から世界中で賛否両論というか主に非難があがっていますが、まあ主審の判断の範囲内なんじゃないかという感想に留めておきます。これで西村さんが決勝トーナメントに登場しなければやはりとるべきでなかったファウル。もし決勝で吹くことになったら賞賛されるべきいい裁定だったとFIFAが判断したということでしょうから。

27 5月, 2014

UEFA CL決勝 レアル・マドリードvsアトレティコ・マドリード

 今シーズンも各国リーグが終了し、残すはヨーロッパの頂点を決めるCL決勝のみとなりました。CLの形式になってからは初の決勝ダービーマッチ、さらに舞台はリスボンということでイベリア半島内で収まってしまう形の今シーズンですが、運動量とスピードで対戦相手を凌駕してきた両チームによる最高峰の戦いが期待できます。

レアル・マドリード

    GK
  •   1 カシージャス
  • DF
  • 15 カルバハル
  •   2 ヴァラン
  •   4 セルヒオ・ラモス
  •   5 ファビオ・コエントラン → マルセロ (59')
  • MF
  • 19 モドリッチ
  •   6 ケディラ → 23 イスコ (59')
  • 22 ディ・マリア
  • FW
  • 11 ベイル
  •   9 ベンゼマ → 21 モラタ (79')
  •   7 クリスティアーノ・ロナウド

アトレティコ・マドリード

    GK
  • 13 クルトワ
  • DF
  • 20 フアンフラン
  • 23 ミランダ
  •   2 ゴディン
  •   3 フェリペ・ルイス → 12 アルデルヴァイレルト (83')
  • MF
  •   8 ラウール・ガルシア → 24 ソサ (66')
  •   5 ティアゴ・メンデス
  • 14 ガビ
  •   6 コケ
  • FW
  • 19 ジエゴ・コスタ → 7 アドリアン・ロペス (9')
  •   9 ダビド・ビジャ

 レアルはシャビ・アロンソが出場停止、ぺぺがベンチスタートと要所を押さえる選手がいないものの、ベイル、ベンゼマ、クリスティアーノ・ロナウドという世界中の監督がうらやましがる攻撃陣は健在。アトレティコは怪我で出場が危ぶまれていたジエゴ・コスタが先発出場とリーガで優勝した勢いそのままのメンバーです。

UEFA Champions League 2014 - Real Madrid-Atlético – UEFA.com

 前半9分で早々にジエゴ・コスタが退いてしまうというアクシデントはあったものの、レアルが攻め手を探っていく中でアトレティコがしっかり守備を機能させチャンスを作らせないというどちらも自分たちのやり方で押していくような形。ボールを持った選手が誰でもクオリティの高い攻撃を仕掛けていけるレアルに対してアトレティコはボールホルダーに前を向かせないという力業で対抗していました。
 レアルの伝家の宝刀であるスピードに乗った突破は一度抜かせてしまうとファウル覚悟でなければ止められないので、どのチームもやっていきたい戦術ではあると思うのですが、やはりプレスを回避して配球できるシャビ・アロンソの欠場が響いているのかここまでしっかりと抑えられてしまう試合は珍しいのではないでしょうか。前半縦のドリブル突破はベイルとディ・マリアの1度ずつくらいとなってしまいました。

 攻撃のポイントを抑えられさらに先制されてしまったことで流れを変えたいレアルはアトレティコの疲れを待つのではなくマルセロとイスコを投入。間違いなく攻めの起点を増やそうという交代で、これによってセンターからの展開のバリエーションが増し左サイドではロナウドがポジションをあけても高い位置で勝負できるようになりました。
 対するアトレティコもラウール・ガルシアに代えてソサを入れて中盤の運動量を確保し速いチェックを継続。徐々に押し込まれる時間帯となっていきますが4-4の守備ブロックに加えてアドリアン・ロペスとビジャまでしっかりと引いて守り確実に数的優位を作ってしのぎます。それでも個で仕掛けられるレアルもすごいのですが。

 後半ロスタイムまでアトレティコが守り切ってもうこのまま終了かと思われましたがこちらもまたCKからセルヒオ・ラモスが同点弾。最後まで流れで崩されなかったあたりアトレティコもがんばったのですがここまででした。延長戦は案の定一方的なレアルペース。もう仕方のないところではありますがビジャしかレアル陣地内でボールを持てないアトレティコに得点の気配はありませんでした。
 ベイルのフィジカルを見せつけるヘディングに続いて途中出場でスタミナが有り余っているマルセロのゴール、ついでにこの日全く仕事をさせてもらえなかったロナウドのPKと公式記録で終わってみれば4-1でレアルが10度目のビッグイヤーを掲げました。アトレティコは89分までリードしほぼゲームプラン通りに勝利を手にしかけていましたが初の栄冠には届かず、シメオネ監督が試合中にもかかわらずピッチ内に入って審判に抗議するなど残念な結果になってしまいました。

 120分で点差はつきましたがいずれにしてもレアル、アトレティコ両チーム共に自分たちのサッカーを高いクオリティで実践し90分間ハードワークできるチームであったことは間違いありません。守備をさぼるFWが許されるのは1人までというのはもはや常識ですし、ボールを繋げないセンターバック、攻撃時に脅威になれないサイドバックもこのレベルになると一段落ちて見えてしまいます。
 組織守備からのカウンターが持ち味と評されているアトレティコにもジエゴ・コスタをはじめ個で勝負できる選手は必要ですし、銀河系軍団レアルも(ロナウドはともかくとして)前線からのベンゼマのチェイスや中盤の選手による囲い込みは不可欠です。アンチェロッティもシメオネも自分のカラーを持ち選手を組んでいくタイプだとは思いますが、この両チームと準決勝で敗れたチェルシーやバイエルンとの違いは極端にどこかに振れるのではなく高いレベルでバランスがとれたチームだったのかなというのを強く感じた大会でした。

19 5月, 2014

セリエA第38節 ミランvsサッスオーロ

 散々だった今シーズンもこの試合で終わりとなります。対する相手は前回の対戦でベラルディの大爆発を許してしまったサッスオーロです。前節破れたことで難しい状況になってしまったEL出場権もまだわずかな可能性を残していますし、最後まで勝点3を求めていきたいですね。

ACミラン

    GK
  • 32 アッビアーティ
  • DF
  •   2 デ・シリオ (89'退場)
  • 13 ラミ
  •   5 メクセス (68'退場)
  • 21 コンスタン → 81 ザッカルド (63')
  • MF
  • 18 モントリーヴォ
  • 34 デ・ヨング
  •   4 ムンタリ → 92 エル・シャーラウィ (59')
  • FW
  • 23 ターラブ
  • 11 パッツィーニ
  • 22 カカ → 45 バロテッリ (73')

USサッスオーロ・カルチョ

    GK
  •   1 ポミーニ
  • DF
  • 33 メンデス → 26 テッラノーヴァ (78')
  •   6 アリアウド
  • 28 パオロ・カンナヴァーロ (86'退場)
  •   3 ロンギ
  • MF
  • 45 チブサー → 14 マスッチ (73')
  •   4 マニャネッリ
  •   7 ミッシローリ → 16 ビオンディーニ (46')
  • FW
  • 25 ベラルディ
  • 10 ザザ
  • 17 サンソーネ

 今日はトップにバロテッリではなくパッツィーニが先発。中盤は前節に続いてモントリーヴォ、デ・ヨング、ムンタリの3人をセンターに並べていますが、前線のメンバーが代わっています。前節でほとんど機能しなかった攻撃をどのように作っていけるか。さらにこ今週からミランの下部組織に所属していた15歳のマストゥール君がプロ契約をしてトップチームに登録されベンチ入りしました。おそらく出場機会はないかもしれませんが注目の選手ですね。

Milan 2 - 1 Sassuolo - legaseriea.it

 試合開始前に余談ですがこの試合はシーズン最終節ということで、定番となっている来シーズンのユニフォームのお披露目ともなっています。最大の特徴は胸のエンブレムがミラノ市の象徴であるサンジョルジョの十字になっている点。バルバラが進めているマーケティング面での改革の一環として、クラブのエンブレムが変更されるのではないかとの噂もありますがそれと関係があるのでしょうか。
 映像で見ていると肩のラインが白になり、縦縞の数も減ったことで全体的には今シーズンよりもシンプルな印象です。ここ数シーズン必ず入っているイタリア国旗の3色は背中のベンチレーション部分に採用されていますがやはりアップにならないと目立たないですね。ただ注意深く見ていくと襟のボタンやフォントが変更された背番号など細かいディティールも凝っていてかっこいいと思います。

 そうこうしているうちに試合開始早々ムンタリの豪快なミドルシュートで先制しさい先のいいスタート。ボールを保持して相手に攻撃をさせないことには成功していますが、例によって相手に引かれてしまうとなかなかゴール前を崩せない展開。逆にいいテンポでシュートまで持っていければ可能性を感じる場面は多かったですし、サッスオーロの両サイドには比較的スペースがあったのでコンスタンやデ・シリオのオーバーラップも効果的でした。
 追加点はデ・ヨングによるゴール正面30メートルくらいの位置からのフリーキック。普段プレースキックを蹴る選手がモントリーヴォを除いて軒並みベンチにいる中でデ・ヨングとラミが準備していたのでどう蹴るのかと思いましたが相手の壁に当たってうまくコースが変わる幸運にも助けられて安心できる追加点となりました。

 後半も安定感のある試合運びで要注意のベラルディも単発の攻撃に抑えることができました。エル・シャーラウィを投入してからは若干守備のブロックがあいてしまう場面もありましたし、メクセスの退場によって少し前への重心が薄れた感はあったものの危なげなく時間を使っていけたのはいいところですね。89分にデ・シリオのPK献上と退場によって少し後味は悪くなってしまいましたが、シーズン最終節を勝利で終えられたのは素直に喜ばしいです。

 他会場の結果によってEL出場圏内である6位はパルマに決定しミランの最終順位は8位。来シーズンヨーロッパの舞台には立てなくなりました。全て今シーズンの結果の積み重ねであり自業自得なので受け入れるしかありません。ここ数年ずるずるときてしまったつけを払うためにもまずはクラブの収支面での改善、そしてフリートランスファーの選手を漁るのではなく将来まで見据えたチーム作りのための選手構成を考えるいい機会でしょう。
 今回マストゥールが盛大なプロモーションと共にトップチーム入りしたのはマーケティング的な理由が大きいのでしょうが、エル・シャーラウィ、デ・シリオを筆頭にペターニャ、クリスタンテといったプリマヴェーラ育ちの若手が今後のミランを担っていってくれることを願わずにはいられません。さらにバロテッリやモントリーヴォ、もちろん本田も含め各国代表に選出されたいま世界のトップを走っているメンバーはW杯で活躍しクラブにもいいフィードバックをもたらしてくれると信じています。

12 5月, 2014

セリエA第37節 アタランタvsミラン

 来シーズンもヨーロッパの舞台で戦うために、残り2試合を連勝で終えなければならないミラン。ダービーに勝利したことで希望は見えているのでこの試合でも勝点3を狙っていきたいです。

アタランタBC

    GK
  • 47 コンシーリ
  • DF
  • 77 ライモンディ
  • 29 ベナルアン
  •   6 ベッリーニ
  • 28 ブリービオ
  • MF
  • 17 カルモナ
  • 21 チガリーニ
  • 18 バセッリ → 8 ミリアッチョ (74')
  • FW
  • 11 モラレス → 23 ブリエンツァ (87')
  • 19 デニス
  • 10 ボナヴェントゥーラ → 91 ジュゼッペ・デ・ルカ (68')

ACミラン

    GK
  •   1 アメーリア
  • DF
  •   2 デ・シリオ
  • 13 ラミ
  •   5 メクセス
  • 21 コンスタン
  • MF
  • 18 モントリーヴォ
  • 34 デ・ヨング
  •   4 ムンタリ → 23 ターラブ (76')
  • 10 本田 → 92 エル・シャーラウィ (46'HT)
  • FW
  • 45 バロテッリ
  • 22 カカ → 11 パッツィーニ (80')

 この試合はひさびさに中盤に3枚並べる4-3-1-2のフォーメーションとなっています。セードルフ監督は今シーズン限りというのがもっぱらの噂ですが、このシステムも来シーズンを見据えた首脳陣の指示なのでしょうか。4-2-3-1も機能してきたところだと思うのですがどうなんでしょう。先発メンバーは出場停止のアッビアーティに代わりアメーリアが先発。トップ下に本田、2トップにバロテッリとカカという顔ぶれとなっています。

Atalanta 2 - 1 Milan - legaseriea.it

 センターハーフを3人並べるフォーメーションは人数をかけてバイタルエリアを埋め、相手の攻撃を封じるための守備のシステムととらえられがちですが、前線の人数が少ないだけに勝利を重ねて行くには攻撃時の工夫が大事になります。
 アンチェロッティはピルロを相手のプレッシャーの少ない位置に置いて守備の負担を軽減させることでFWに正確なパスを届け、アッレグリは、ノチェリーノ、ムンタリ、そしていまは監督となっているセードルフを次々と前線に飛び出させることで攻撃に厚みを持たせてきました。

 そしてこの両方でスクデットをとったシーズンで重要だったのが劣勢の時ひとりでも試合を決めることができるシェフチェンコやイブラヒモビッチといったFWの存在でしょう。カウンター1発で相手を置き去りにできるスピード、味方のあがりを待ってボールをキープできる力といったものがないと安定して上位をキープするために必要な負けないチームにはなれない気もします。
 バロテッリは当然その役割を期待されていますが前述したストライカー達のような活躍は見せられていません。その結果としてミランは低迷しアッレグリは解任、セードルフは就任時から4-2-3-1の採用を公言し勝率を上げていることを考えると現状で3センターを採用する意図がよくわからなくなってしまいます。

 今シーズンの総括のような内容になってしまいましたが、この試合に負けたことで上位への進出はほぼなくなってしまいました。ミランの攻撃の時間が少なかったわけではないのですがこれといった形が作れず、最後のブリエンツァによる劇的なスーパーゴールはもう相手を褒めるしかないようなものなので仕方のないところでしょう。
 エル・シャーラウィの復帰やカーサ・ミランのお披露目、新スタジアムの話も進捗があるようですしピッチの中でも外でも今後に向けて長い目で見ていく必要がある時期です。数年後に振り返って13-14シーズンが上昇のターニングポイントになるようにしていきたいですね。もちろん次のサッスオーロ戦にはいい形で勝利して気持ちよくシーズンを終えましょう。